鴉の爪

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「トランスフォーブ」の方との対話

crowclaw-2.hatenadiary.org

 

前回のブログに「トランスフォーブ」を自称する方から丁寧なご感想が来たので、お答えしようと思います。ありがとうございます。

 

 

はい、そうではありません。実際的には「外見」で男女を区分けしているに過ぎず、性同一性は関係ありません。よって、性同一性が女性で「外見」も女性の人物は女性用トイレを利用する権利を有しており、実際に使っているケースもあると思われます。

 

 

はい。所謂GID特例法の制定は2003年で、今から18年前には日本でもそうした人々が公的に認められていたことになりますね。

ja.wikipedia.org

 

 

それは事実に反します。「どうやって線引きするのがいいか」は当事者の方が03年以前からずっと社会に向き合って考えていたことで、また当事者を知るフェミニスト達も、長らくこの問題に取り組んでいました。一般市民が知らなかったのは事実かと思いますが。

そもそも、他人の性に「線を引く」権利は誰にもありません。「線引き」を行うとすれば、当事者が自分で行うしかないのです。それが性的自己決定権です。

childrights.world.coocan.jp

 

 

残念ながら貴方も含めて「リベラル派」が「TERF」に多いのは事実だと思います。そうした意味では「チェリーピッキング」という批判は当たらずも遠からずかも知れません。

ただ、私が取り上げた人物は、2019年3月のウィメンズマーチの時点で「代表的なトランスフォーブ」として取り上げられており、現在でも5000人以上のフォロワーを誇る人物です。発言内容も反トランス派内部での存在感も、「異端」でも「小物」でもありません。あえて言えば、ブログに引用したような保守派特有のストレートに差別的な物言いが「異端」だとは思いますが。

nokaze0411.hatenablog.com

 

 

はい、左派内部でのジェンダーギャップは確かに深刻です。しかしトランス差別はそうした現状の(悪しき)反映でこそあれ、「反トランス派こそジェンダーギャップ解消に取り組む左派だ」とは言えないのではないでしょうか。

それはネットでしばしば見られる右翼男性の反トランス言説(内容的には左派男性と一緒)が、完全なセクシズムそのものであることからも明白だと思いますが。

典型的な例です。一見常識的な意見に見えますが、こういう人には「女性が身体能力で男性を上回る場面もある」という想定が一切ありません。先日のオリンピックでは卓球をはじめ、男女混合種目が増えたことで話題になりましたね。

 

 

女性専用車両を引き合いに出すまでもなく、全ての性別分けは性差別でしょう。問題は、差別をするに足る合理的理由があるか・ないかです。

 

 

後天的習得技能である運転免許の問題、国会の防犯の問題、男女トイレの区分けの問題は、各々全く別のレイヤーの話で一緒くたにして語ることは出来ないと思います。

免許は端的に言って差別とは無関係ですし、国会を防犯しても犯罪者が「合理的差別」を受けていることにはなりません。ドライバーや犯罪者はその行動で判断をされているのであって、本人の「属性」は無関係だからです。その人の「属性」が問題となるのは男女別トイレだけです。そして、属性と犯罪性を結びつけるあらゆる理論は差別です。

 

 

性の要素が多様であることは事実ですが、性差別をあまりに単純に考えすぎだと思います。精神性と身体性をパーツのように単純に切り分け出来れば、だれも「性自認」で悩みません。そして、シス女性とトランス女性の受ける差別は同じものではありません。インターセクショナリティの観点に立てば、より強い複合差別に立たされる側が社会的に「マイノリティ」であることは明白です。

ja.wikipedia.org

 

 

はい、それには異論はありません。

 

 

トイレと風呂をごっちゃにして語る事は出来ません。否応なく裸にならざるを得ない風呂を身体的特性で分割することはただちに差別には該当しませんが、トイレでは通常、他人の性器を目にする機会はありません。

そして「性的差異を無視しろ」などとは誰も言っていませんし、当事者こそ強固なバイナリー規範と差別のために(外見上の「パス度」に不安がある場合は)多目的トイレを使用せざるを得ない状況があります。これは社会のバイナリー規範を弱めること≒男女のジェンダーレス化推進でしか解決出来ません。

 

 

ブログにも書いたはずなのですが、「今までのルールだと私たちは入れないから入れて」などとは誰も言っていません。上述したように、当事者個々人が微妙な「線引き」のうえで、己の外見と性同一性上の性別を勘案し、適切な性別のトイレ、もしくは多目的トイレを使用しているのが現状なのです。

 

実は、(多目的トイレ増設を除けば)「現状を変えるな」と主張してるのは我々「TRA」の方で、貴方がたが「現状だと悪い人も一緒に入ってきちゃうから何とかしろ」と要求しているのです。そして、それが科学的根拠に基づかない不当な要求である事は、前回の記事で書いたとおりです。「差別をするに足る合理的理由があるか・ないか」で言えば、バイナリー規範に沿わない男女を男女別トイレから追放する「合理的理由」は存在しません。

更に、インターセクショナリティの観点を踏まえれば、この男女二元論的な世界で最も「不当な目に合」いつづけてきたのはトランスジェンダーやノンバイナリーやクィアの人々であり、バイナリーの男女は社会的多数派としてかれら(they)に配慮する義務があります。

その義務を果たそうとせず、己の安心感のために不当な要求をしてくるから「差別だ」と批判しているのです。