「トランスフォーブ」の方との対話
前回のブログに「トランスフォーブ」を自称する方から丁寧なご感想が来たので、お答えしようと思います。ありがとうございます。
>現状通り「外見が男性/女性であるなら、逮捕されずに「性同一性」の性のトイレを利用する権利(これは法律上も認められています)」
— ヘイトを許さない一市民 #投票倍増委員会 (@nohate38306132) 2021年12月14日
とあります。しかしこれは現状でしょうか。皆さんは"私の性同一性は〇〇だ、だから〇〇トイレだ。"と思ってトイレを選んでいますか?多くは違うと思います
はい、そうではありません。実際的には「外見」で男女を区分けしているに過ぎず、性同一性は関係ありません。よって、性同一性が女性で「外見」も女性の人物は女性用トイレを利用する権利を有しており、実際に使っているケースもあると思われます。
そもそもこれまでの社会は"外見と身体と性同一性の性別が一致しない人はいない"ことを前提にしていました。
— ヘイトを許さない一市民 #投票倍増委員会 (@nohate38306132) 2021年12月14日
しかし、フェミニズムによってジェンダーが相対化され、医学によって性同一性障害が発見され、認知されることでそれは必ずしも一致しないことがあると知られるようになりました
はい。所謂GID特例法の制定は2003年で、今から18年前には日本でもそうした人々が公的に認められていたことになりますね。
じゃあ "それらが一致しない人がいる社会でどうやって線引きするのがいいかな?それを考えていこう" という話が今の段階です。
— ヘイトを許さない一市民 #投票倍増委員会 (@nohate38306132) 2021年12月14日
今まで外見と身体と性同一性の性別が一致しない場合に性同一性の性別を優先するというルールだったわけではありません
それは事実に反します。「どうやって線引きするのがいいか」は当事者の方が03年以前からずっと社会に向き合って考えていたことで、また当事者を知るフェミニスト達も、長らくこの問題に取り組んでいました。一般市民が知らなかったのは事実かと思いますが。
そもそも、他人の性に「線を引く」権利は誰にもありません。「線引き」を行うとすれば、当事者が自分で行うしかないのです。それが性的自己決定権です。
また、"トランスフォーブ達の本音"と称して「保守右派」の人物のブログを引っ張ってきました。後半でも"TERF"と呼ばれている人たちを「極右的」として右翼に結び付けようとしている姿が見られますね
— ヘイトを許さない一市民 #投票倍増委員会 (@nohate38306132) 2021年12月14日
私が見ている限り"TERF"と呼ばれている人たちの多くはどちらかというとリベラル思想の人が多いです。男女の平等を求める立場ですから当然ですね。その中で少数派の保守の人をわざわざピックアップして"これが本音だ"というのはチェリーピッキングと言わざるをえないと思います
— ヘイトを許さない一市民 #投票倍増委員会 (@nohate38306132) 2021年12月14日
残念ながら貴方も含めて「リベラル派」が「TERF」に多いのは事実だと思います。そうした意味では「チェリーピッキング」という批判は当たらずも遠からずかも知れません。
ただ、私が取り上げた人物は、2019年3月のウィメンズマーチの時点で「代表的なトランスフォーブ」として取り上げられており、現在でも5000人以上のフォロワーを誇る人物です。発言内容も反トランス派内部での存在感も、「異端」でも「小物」でもありません。あえて言えば、ブログに引用したような保守派特有のストレートに差別的な物言いが「異端」だとは思いますが。
一方で"TERF"と呼ばれている人たちに左派、リベラル派から距離を置こうとしている人がいるのも事実です。左派にも性役割意識が強く残っています。今の左派の重鎮達が若かった学生運動の時代、学生運動に参加した女性はバリケードの中で生活する学生のための家事を割り当てられるなどしていました
— ヘイトを許さない一市民 #投票倍増委員会 (@nohate38306132) 2021年12月14日
女性政治家にリベラル派支持者からセクハラ的な発言が向けられることもあります。現在の日本の左派が十分に女性の権利を尊重していないと感じることが多いのです。右派政党であってもそれを尊重してくれる勢力があれば近づくのは理解できます
— ヘイトを許さない一市民 #投票倍増委員会 (@nohate38306132) 2021年12月14日
(私はそれは得策だとは思っていませんが)
はい、左派内部でのジェンダーギャップは確かに深刻です。しかしトランス差別はそうした現状の(悪しき)反映でこそあれ、「反トランス派こそジェンダーギャップ解消に取り組む左派だ」とは言えないのではないでしょうか。
それはネットでしばしば見られる右翼男性の反トランス言説(内容的には左派男性と一緒)が、完全なセクシズムそのものであることからも明白だと思いますが。
素直に「生物学的女性部門」と「生物学的男性部門」でわけてるって明言すべき問題なんですよね。 https://t.co/4gI1pkyx0W
— もへもへ (@gerogeroR) 2021年12月5日
典型的な例です。一見常識的な意見に見えますが、こういう人には「女性が身体能力で男性を上回る場面もある」という想定が一切ありません。先日のオリンピックでは卓球をはじめ、男女混合種目が増えたことで話題になりましたね。
性犯罪者の99%は男性だが男性の99.99%は犯罪者ではないという主張もあります。その論法でいけばトランスも何もあらゆる性別分けは不当であるということになります
— ヘイトを許さない一市民 #投票倍増委員会 (@nohate38306132) 2021年12月14日
女性専用車両を引き合いに出すまでもなく、全ての性別分けは性差別でしょう。問題は、差別をするに足る合理的理由があるか・ないかです。
自動車所有者の多くは安全運転をします。でも安全運転しない人もいるから運転免許講習を受けて運転免許をとらないと運転できません。
— ヘイトを許さない一市民 #投票倍増委員会 (@nohate38306132) 2021年12月14日
国会に来る人の多くはテロリストではありません。でも国会でテロを起こす人がいる可能性もあるので国会議事堂前には警備員がいて出入りをチェックしています
男性の多くは性犯罪者ではありません。でも性犯罪者もいるから女子トイレを作りました。
— ヘイトを許さない一市民 #投票倍増委員会 (@nohate38306132) 2021年12月14日
多くはないけれど、問題が起こる可能性を想定して制限を設けるというのは別に差別ではなくルールを作る際に当然に行われていることです
後天的習得技能である運転免許の問題、国会の防犯の問題、男女トイレの区分けの問題は、各々全く別のレイヤーの話で一緒くたにして語ることは出来ないと思います。
免許は端的に言って差別とは無関係ですし、国会を防犯しても犯罪者が「合理的差別」を受けていることにはなりません。ドライバーや犯罪者はその行動で判断をされているのであって、本人の「属性」は無関係だからです。その人の「属性」が問題となるのは男女別トイレだけです。そして、属性と犯罪性を結びつけるあらゆる理論は差別です。
性の要素は多様です。
— ヘイトを許さない一市民 #投票倍増委員会 (@nohate38306132) 2021年12月14日
外見と身体と性同一性がそれぞれ違う人がいる中で社会生活を送っていく中で、外見的女性は外見的男性に対しマイノリティであり、身体的女性は身体的男性に対してマイノリティであり、自認上女性は自認上男性に対してマイノリティです
どの点の差異を考慮すべきかは、その目的によって変わります。そして、トイレや風呂などは身体差によって身体的女性に危険がありうるところであるために男女で分けられています。身体差によって危険があるスペースで身体的女性と身体的男性を区別することは差別ではないと私は考えています
— ヘイトを許さない一市民 #投票倍増委員会 (@nohate38306132) 2021年12月14日
性の要素が多様であることは事実ですが、性差別をあまりに単純に考えすぎだと思います。精神性と身体性をパーツのように単純に切り分け出来れば、だれも「性自認」で悩みません。そして、シス女性とトランス女性の受ける差別は同じものではありません。インターセクショナリティの観点に立てば、より強い複合差別に立たされる側が社会的に「マイノリティ」であることは明白です。
一方で外見的・自認上女性である人が外見上・身体上・自認上男性のスペースに入ることが危険があることも理解できますので、身体的女性スペースとは別に"誰でもトイレ"などのトランス女性が安心して利用できるスペースの設置を義務づけ増設を支援する必要があると考えます
— ヘイトを許さない一市民 #投票倍増委員会 (@nohate38306132) 2021年12月14日
はい、それには異論はありません。
私は"トランス女性は就職・就学・福祉あらゆる面で除外しろ"と主張している訳ではありません。ただ、トイレと風呂は身体の差によって危険が生じうるから身体で分けて欲しいと言っているのです
— ヘイトを許さない一市民 #投票倍増委員会 (@nohate38306132) 2021年12月14日
そのスペースの目的、状況に関わらず常に自認上の男女のみを優先し、それ以外の性的な差異を無視しろというのは性の多様性に対し非常に視野が狭く偏った捉え方ではないでしょうか
— ヘイトを許さない一市民 #投票倍増委員会 (@nohate38306132) 2021年12月14日
トイレと風呂をごっちゃにして語る事は出来ません。否応なく裸にならざるを得ない風呂を身体的特性で分割することはただちに差別には該当しませんが、トイレでは通常、他人の性器を目にする機会はありません。
そして「性的差異を無視しろ」などとは誰も言っていませんし、当事者こそ強固なバイナリー規範と差別のために(外見上の「パス度」に不安がある場合は)多目的トイレを使用せざるを得ない状況があります。これは社会のバイナリー規範を弱めること≒男女のジェンダーレス化推進でしか解決出来ません。
これまで想定していなかった状況が明らかになった、ではそれを想定してルールを作ろうという段階において
— ヘイトを許さない一市民 #投票倍増委員会 (@nohate38306132) 2021年12月14日
一方が"今までのルールだと私たちは入れないから入れて"と困っている。
もう一方は"そうすると、悪い人も一緒に入ってきちゃう"と困っている
双方の声を聴いた上でなるべく誰も困らない状況(私はそれが、誰でもトイレの設置義務化と思っている)を作るべきなのに、後者のみを"対話不可能"と見做し、考慮しないことは不当であると私は考えます。そしてその不当な目に合うのは"何故か"いつも女性なのです
— ヘイトを許さない一市民 #投票倍増委員会 (@nohate38306132) 2021年12月14日
ブログにも書いたはずなのですが、「今までのルールだと私たちは入れないから入れて」などとは誰も言っていません。上述したように、当事者個々人が微妙な「線引き」のうえで、己の外見と性同一性上の性別を勘案し、適切な性別のトイレ、もしくは多目的トイレを使用しているのが現状なのです。
実は、(多目的トイレ増設を除けば)「現状を変えるな」と主張してるのは我々「TRA」の方で、貴方がたが「現状だと悪い人も一緒に入ってきちゃうから何とかしろ」と要求しているのです。そして、それが科学的根拠に基づかない不当な要求である事は、前回の記事で書いたとおりです。「差別をするに足る合理的理由があるか・ないか」で言えば、バイナリー規範に沿わない男女を男女別トイレから追放する「合理的理由」は存在しません。
更に、インターセクショナリティの観点を踏まえれば、この男女二元論的な世界で最も「不当な目に合」いつづけてきたのはトランスジェンダーやノンバイナリーやクィアの人々であり、バイナリーの男女は社会的多数派としてかれら(they)に配慮する義務があります。
その義務を果たそうとせず、己の安心感のために不当な要求をしてくるから「差別だ」と批判しているのです。