鴉の爪

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推しを感染させないためにどうしたら良いか――本間ひまわりさんのケースから

先日、新型コロナウイルス感染を発表していたVtuberグループにじさんじ所属のバーチャルYouTuber、本間ひまわりさんが久しぶりの復帰配信で、当時の体験を詳細に語りました。

 

 

1.本間さんの体験談から見る、コロナウイルス感染症

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【にじさんじ 切り抜き】本間ひまわりのコロナになって辛かった事」のワンシーン。

感染発覚直後、本間さんは「過去一週間で出会った人を思い返して(誰にも接触していないので)大丈夫だと思った」と語っていますが、自分よりもまず他人を案ずる優しさも然る事ながら、これはコロナ感染時の対応として極めて的確です。

コロナウイルスの厄介な特徴として、症状が発現しない、所謂潜伏期間と感染能力のズレがあります。

平均して、感染者は感染後、5日程度で発熱等の症状が出て、発症後5日ほどで悪化のピークを迎え、その後更に5~7日程度で回復します(重症化した場合はさらに長く症状が続きます)。しかし、コロナが最大の感染力を発揮するのは発症の直後であり、その後は急速に感染力を失っていきます。この時間差のため、無症状である潜伏期間が長ければ長いほど、気付かないうちに他人に移してしまっている可能性は大きくなります。本間さんのように、若年者であれば平均以上に症状が顕在化しにくい場合もあります。それ故、発症一週間前までの接触履歴は大変重要になります。

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英国の医学誌ブリティッシュ・メディカル・ジャーナルによる感染力(viral genome)と症状(illness)悪化のグラフ。感染力が潜伏期間を経て発症直後ピークに達し、以降は症状の悪化度合いに関わらず減衰していくことがわかる。

また本間さんは、発症2日後(?)にどうしても休みたくない収録が有り、自宅で録ったと語られていますが、上のグラフの通り、発症2日前後ではまだ症状悪化のピークではなかった(体力があった)と推測されます。しかしながら、その後の悪化はほぼ確定的であるため、体力維持のためにもピークまでは絶対安静にすべきだったと言えるでしょう。勿論、そのプロ意識は立派であり、彼女を責める意図はありません。

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パルスオキシメータについて ~酸素飽和度ってなに?~ | 医師ブログ」より

症状のピーク時には、パルスオキシメーターの酸素飽和度が95以下まで下がったと言われていますが、上のグラフの通り、95は高齢者の平均値で、93以下になると一気に危険な状態となります。救急隊員の「息を深く吸って95以上を保ってください」という指導は、医療崩壊下の自宅療養としてはやむを得ないものですが、普通であれば即時入院相当であり、いかに当時の東京が異常な状態であったかわかります。

本間さんは、コロナウイルス感染症の代表的な後遺症の一つである味覚障害に悩まされていると語っています。これは耳鼻口腔内部で増殖したウイルスが神経細胞を破壊したためであると推定されており、20~30代感染者の7割に症状が見られ、改善に1~2年かかるケースもあるとの報道もあります。仮に軽症で済んだとしても、種々の後遺症に苦しむ可能性は否定出来ないのです。

何れにせよ、自分がコロナに感染しないため、そして大切な推しを守るためにも、感染症対策は絶対に行わなくてはいけません。でも、具体的にどうすればいいのでしょうか。

 

2.ワクチンの接種とそのリスク

現在猛スピードで接種が進むコロナウイルスワクチンについては、所謂反ワクチン派による悪質なデマが大量に拡散されており、SNSは勿論、ウェブサイトや書籍ですら専門家の解説にスムーズにアクセスするのが難しい状況にあります。金儲けの為に人命を奪いかねないデマを流す人物の下劣さには文字通り付ける薬がありませんが、特に「コロナに感染しても重症化しにくい」にもかかわらず「ワクチンの副作用が強く出やすい」、相対的に「ワクチン接種のメリットが薄い」若年者は、専門家による正しい情報へアクセスすることが大事です。

なお、20代以下の若年者であっても、副作用などワクチンによるデメリットが、ワクチン接種のメリットを上回ってしまうケースはほとんどありません。ワクチンによる一時的な発熱や倦怠感は、コロナウイルスに感染した場合、より重篤な症状が出ていたであろうことを示すものであり、キツめの副作用が出た場合でも「感染しなくてラッキー」と前向きに考えるべきでしょう。

ワクチンの効能及び副作用の解説については、専門家が作成する解説サイト「こびナビ」の解説が、日本語では最も正確で詳細です*1。運営組織(政府関係者?)の不透明さについて一部で批判もありますが、記述自体に誤りはなく、特にワクチンQ&Aは(やや小難しい部分はあるものの)よくある疑問点を詳細に回答しており、有用と言えるでしょう。

自分がワクチンを打てる状況になったら、「ワクチンQ&A」で詳細を調べ、それでも不安や疑問点があれば動画コーナーで知りたい内容の動画を探してみると良いと思います。

ワクチンを打った後は、数日間出来るだけ安静にし、激しい運動などは控えるようにしましょう。若年者が一番怖いワクチンの副作用は、10万人に4人程度の確立で発生する心筋炎で、これは運動により急激に悪化する可能性があります。部活のトレーニングなども休んだ方が賢明です。

 

3.最強の盾、不織布マスク

しかし、特ににじさんじファンの方は「まだ10代だし、ワクチンをいつ打てるか分からない」「来年まで打てないかも知れない」という状況の人も多いでしょう。加えて、所謂コロナウイルスデルタ変異体の驚異的な感染力により、ワクチンだけでは感染症の終息は難しいと報道されています。では、今まで通りに出来るだけの外出自粛を続けるしかないのでしょうか?

コロナウイルス感染の有効な防御策は、とにかくウイルスを体内に入れないことです。その為には、外出時は常に不織布マスクを着用し、特に人混みなどでは絶対に外さないことがとても大切です。もちろん、外食もダメです。

WHOがデルタが所謂エアロゾル感染によって異常な感染力を獲得していると認めたにも関わらず、頑なにその事実を認めないばかりか、正しいマスクの選び方についても国民へ啓蒙しないのは政府の怠慢であり、「ワクチン一本槍」と揶揄されるのは当然と言えます。エアロゾルはウレタンマスクや布マスクを容易に貫通しますので、これらのマスクを着用することはほとんど無意味です。特に若年者には、お洒落の観点からウレタンマスクを愛用している人が未だに多く見られますが、唾などによる飛沫感染がメインだった初期のウイルスならともかく、デルタに対しては不織布以外に感染を防止する効果はないとハッキリ言うべきでしょう。

当たり前ですが、布すら貫通する微粒子ですので、フェイスガードやパーテーションも全く意味がありません。常時不織布マスクを付け、鼻や顎からの空気漏れがないように気を付けながら、外す際などはよく手を洗い、口内へのウイルスの付着を防ぐことが大事です。マスクは直接ゴミ袋などに捨て、二度と触らないようにしましょう。

一部のYouTuberが「マスク無意味説」等を唱えていますが、以下のグラフにある通り、少なくとも不織布マスクは相当程度感染を防止出来るエビデンスがあります。無意味なのは布とウレタンだけです。不勉強な大人の言うことではなく、専門家の意見に耳を傾けましょう。

実験で新事実「ウレタンマスク」の本当のヤバさ」より、感染症専門家・西村博士の実験データ。微粒子に対してはウレタンマスクが感染予防に全く無意味であるとわかる

 

しかし、そうはいっても「常に白いマスクはイヤ」「折角買ったウレタンマスクが勿体ない」という声もあるでしょう。そういう人にお勧めしたいのが二重マスク(ダブルマスク)です。

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アメリカ疾病予防管理センターマスクガイド」より。不織布マスクの上にマスクフィッターや布マスクの着用を推奨している

不織布マスクは感染予防に適切ですが、どうしても「空気漏れ」が発生しやすく、漏れた隙間からエアロゾルを吸い込んだ場合、マスクを付けていても感染してしまう恐れがあります。マスクをより強く顔に密着させるためには、不織布マスクの上から布マスクやウレタンマスクを付けることが効果的であり、ルックスも改善されます。当然ですが、「ウレタンマスクの上に不織布マスクを付ける」または「二重に不織布マスクをつける」などの行為は無意味なのでやめましょう。息苦しいだけです。

女性など、口紅や化粧がマスクについてしまうことを気にする場合は、立体型の不織布マスクを着用することをオススメします。9月8日に、シャープが新製品「シャープクリスタルマスク」を発売しています。お値段は少々高いですが、国産品であり、防御性能も問題ないと思われます。普通の不織布マスクと違い密着しないため、息苦しさも改善されます。

 

4.日常を取り戻すために

現在、コロナウイルス感染症のためにエンタメ業界は深刻なダメージを受けており、現状が続けば、以前に行われていたような大規模ライブは開催が難しくなっていくでしょう。

一刻も早く日常を取り戻すためにも、ウイルスへの感染と拡散を食い止め、簡易で適切な治療法の確立まで時間を稼ぐほかありません。エアロゾル感染についての研究はまだ発展途上にありますが、米国や英国はいち早く大規模音楽フェスの実験的開催に踏み切るなど、コロナ対策への知見を日々積み重ねています。

ワクチン接種とマスク着用の徹底によって、来年は皆で推しのライブを見に行けるようにしましょう。

 

参考文献コロナウイルス感染力シミュレーション、マスク着用方法等)

 

*1:念のため記載しておきますが、新型コロナウイルス感染症については未だ研究の途上にあり謎が多く、こびナビにある最新の研究が今後更に訂正・修正される可能性は大いにあります